先生がいてくれるなら③【完】



──立花が俺の部屋に来るのは、ここでクリスマスに一緒に過ごして以来だ。


立花があまりの散らかりように呆気にとられている。


仕方ないだろー、4月以降、死ぬほど忙しかったんだから。


ある意味、付き合ってなくて良かったのかも知れないとも思う。


だってきっと全くお前にかまってやれなかったと思うから。



「座ってて。冷たいコーヒー入れてくる」


そう告げて、俺はキッチンへ向かった。



立花が来るって分かってたらもう少し綺麗にしてた──かどうかは、微妙なところだな。


今日から夏休みに入りはしたけど、俺の仕事が無くなるわけじゃない。


成績不振者の夏休みの補講用のプリント作りや段取りの確認、二学期の中間テストの問題作りなんかにも手を付けなきゃいけない。


ついでに、卒業に向けてのアレとかコレとか……、あぁ、考えただけでブルーになってきた。



二つのグラスにコーヒーを注いでリビングに戻ると、テーブルにはグラス二つを置くスペースすら無かった。


立花に書類を少し片付けて貰い、そこへグラスを置く。


書類を片付けて貰う際に立花が「見ちゃいけないものとか、無いですよね?」と尋ねたが、確かに、生徒に見られたら困る物を持ち帰って作業することもある。


一緒にいた頃は一応気を付けていて、あいつが帰った後とかに作業していた。


──そう言う部分、ちゃんと分かってたんだなぁ。