立花は潮の香りに誘われるように、このすぐ先にある公園へと歩いて行く。
綺麗に整備された公園のすぐ向こう側は、海だ。
一人で考え事でもしてるんだろうなぁ。
……しかしこの暑い中、あいつ、大丈夫かな。
まさか熱中症でぶっ倒れたりしないだろうな。
あまり遅かったら、見に行くしかないか……。
そう考えながらも、もう一度携帯をコールしてみる。
出ないんだろうな、と半分諦めながら耳に当てると、突然コール音がブツリと切れた。
その後は何度かけても『電波の届かない場所にいるか、電源が入っていないため……』と言う例の味気ない声が返って来るばかりだ。
くそっ、電源落としやがったな、あいつ……。
俺からの着信履歴を全無視しやがって。泣くぞ。
ムッとしながら車の外に出ると、公園の方からこちらに歩いて来る立花の姿が見えた。
俺に気付いて、一度立ち止まる。
「電源落とすこと無いだろう」
俺がちょっと不機嫌な声でそう言うと、立花は眉根を寄せた。
そんな嫌そうな顔するなよ……さすがに俺だってそろそろ傷つく。
「立花、話がしたいんだ。頼む」
俺がそう言っても、立花の表情は変わることはなかった。
でも、俺だってこのまま引き下がるわけには行かない。
「お前に話さなきゃならない事がある。だから──」
俺がそう言うと、立花はやっと俺のすぐ目の前まで歩いて来て「私から話すことは無いですけど、先生の話を聞くだけなら」と言った。
うん、それで良いよ、とりあえずは。
もちろんそれだけで解放なんてしてやらないけど。



