その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~


しかも小ぶりとはいえ2つもケーキを食べるなんて。連日連れ出されたランチで友藤さんが頼んだ分のデザートを食べている。この前は抹茶アイスとカスタードプリンだった。
でも目の前の誘惑に逆らえそうにない。帰りは一駅手前で降りて歩こうと心に決めた。

「美味しく食べてくれる子に食べられる方がケーキも幸せだよ」
「…イタダキマス」
「はは、召し上がれ」

このセリフに女の子たちはうっとりするんだろうか。私は鳥肌が立ちそうなんだけど。

食後のタイミングで運ばれてきたフォンダンショコラはまだちゃんと温かい。
フォークを入れると中からとろりとした濃厚そうなチョコレートが溢れてくる。

「わぁー!」

美味しそうな光景に堪えきれずに声が出た。

しっとりとしたケーキに溢れ出たチョコレートを纏わせながら口に運ぶ。
あまりの美味しさに「くぅー」と呻いて目を閉じた。

「あのさ」

フォンダンショコラに目を向けながらコーヒー片手に声を掛けてくるので、言いたいことに思い至って先手で封じる。

「フォンダンショコラってエロいよなって言い出したらフォークで刺しますよ?」
「ぶふっ…」

友藤さんが飲んでいた食後のコーヒーを思いっきり噴いた。