しかし、こと友藤さんに至ってはこの方程式は通用しない。

あのクズで最低な初対面は何をもってしても覆ることはないと断言出来る。

だから決して彼ほどではなく、そこそこ第一印象の悪い男性がいれば、きっと見る目のない私のこと。素敵な人である可能性が高いのだ。

そしてその彼がDTであれば尚良い。

そんな私の切なる願いを知っているのは、なぜか目の前でハンバーグを頬張っている友藤さんただ1人だ。


4月から5月の中旬頃までが、出張健診部が1年で最も多忙を極める時期。『魔の春』と呼ばれている。3月に入ると事務の先輩が『まのはるが来るー』と騒いでいて、一体誰のことかと思っていた。

学校は新入生健診、企業は新年度の頭に従業員健診を入れるところが多いため、毎日何か所も現場がある。

そのため毎日どこかしらの現場に行くことになり、所内でしか出来ない事務作業は健診業務が終わったあとにすることになる。

連日残業に続く残業をなんとかこなし、やっと落ち着いてきた6月。

現場に出ることも少なくなり、所内にいると何かと声を掛けてくる友藤さんとこうして一緒にランチに出る事が多くなった。