もちろん一緒に過ごしていれば些細な嫉妬心が芽生えることもあるけど、彼が溢れんばかりの愛情で私を包み込み安心させてくれる。

だからこそ。
私は今日彼に伝えようとある一大決心をしていた。


遊人さんお手製の美味しいチョコレートブラウニーをしっかりと飲み込んでから、私は鞄に忍ばせていた小さな四角い箱を取り出した。

「遊人さん、お願いがあるの」

オレンジ色のベルベットの箱は、もちろん彼にも見覚えがあるだろう。
北海道に来る前に、彼が私に渡してくれたものだった。

「朱音?」
「待たせてごめんなさい。あの、もう1回…、言ってくれる?」

言いたいことを察してくれた遊人さんは私の手から箱を受け取ると、中からプリンセスカットのダイヤが華やかに輝く指輪を取り出し、私の左手をそっと握った。


「朱音、これからは2人で一緒に生きていこう。俺の、生涯でただ1人の妻になってほしい」
「……はい!喜んで」