正月休みを利用して帰省中、相変わらず暇を持て余して僕は秀さんのレストランの手伝いをし帰宅した、その夜。
「ただいま。」
玄関を入ると外出していた家族が帰っていたらしく、三和土に人数分の靴が綺麗に揃ってあった。
「お帰りなさい。玲央。
百合ちゃんの所も明日からお休みだっけ?」
母と百合さんは高校時代の同級生で今も昔も親友だとか。
「うん。5日まで休み。」
百合さんのご主人である秀さんは熊本県出身で帰省する為、お店は明日から正月休みに入る。
「賄い食べてきたのよね?
なら、夕食はいらないわね。
さっきまで湊介君と美鈴が来てたのよ!
ケーキ持って来てくれたから、一緒に頂きましょ。」
美鈴(みすず)とは僕の姉で、湊介(そうすけ)さんは姉の夫であり僕の義理の兄だ。
二人は喫茶店を営んでおり、時々こうやってケーキやサンドウィッチなどを持ってきてくれる。
姉たちの喫茶店は元々、祖父母が営んでいたのを受け継いでくれた。
祖母がキルトが大好きでお店の名前もだが、店内の至るところに彼女が手作りしたパッチワークを壁に掛けてあったり、キルトのクッションや座布団、コースターなどの小物とキルトに溢れている。

