「……光が感情を失ったのは、あなた方の心ない言葉のせいなのに?自分たちが光を壊したくせに、よくそんなことが言えますね!!」

「光とは、保育園に通っていた頃、よくマンションの前で遊んでいました。あの時はよく笑って明るい子だったのに、突然感情を失った!でも原因なんて、あのマンションに住んでいたら誰だってわかる。光の家からは怒鳴り声と暴言しか聞こえてこない!そんな家で育ったら、誰だっておかしくなる!」

父親は怒りで青筋を立てているが、それに負けないほど紫苑は怒っていた。自分をこんなにも心配して、怒ってくれる人がいる、それを目の当たりにした光の心が、一瞬温かくなった気がした。

「……行こう」

光は紫苑に手を引かれ、走らされる。父親が何かを喚いているが、そんなもの耳に届かない。光はただ、真剣な表情の紫苑の横顔を見つめていた。

最近聴いた歌の中で、人との絆について歌っているものを光は耳にした。絆というものは身近にあって、人はそれを知らずに探し続けている、という歌詞のもの。