光は首を横に振り、相変わらず抑揚のない声で「父さんが食べる」と言った。そして、本当はお酒も買って来いと言われたが変えないことなども話す。紫苑は笑顔ではなく、真剣な表情で光の話を聞いていた。

「光……」

紫苑が何かを言いかけた刹那、「テメェは買い出しの一つもできねぇのか!?」と怒鳴りながら父親が走ってくる。すると、光の腕が引かれて紫苑の背後に隠れるように立たされた。

「何だ、テメェは!!」

父親は紫苑を睨み付ける。しかし、紫苑は動じることなく「光の友達です」と言った。すると、父親は「嘘だろ」と馬鹿にするかのように笑い出す。

「お前、こいつが精神的におかしいこと知らねえのか?無理にこんな気持ち悪い奴と一緒じゃなくていいんだぜ?俺は、こいつのことを息子だなんて思っちゃいねぇからな。義務教育が終わったら、施設にでもぶち込んでもらうつもりだしよ」

父親が発するとはとは思えない言葉だ。紫苑は怒りで肩を震わせている。しかし、光はボウッとそれを見ているだけだ。何も辛くないし、悲しくない。むしろそう言われるのが当たり前だから、何も感じない。