私達の寝る前の日課は、彼と今日一日の出来事を話す事だ。
不眠症気味の彼は、いつも私が寝るまで話に付き合ってくれる。


けれど、今日は、


「眠そうですね。」


いつもよりも彼の瞼は重そうだ。今にも閉じてしまいそう。


「うん、今日はなんだか、よく眠れそうで、」


瞬きもゆっくりで、口調もゆっくりだ。


「よかったです。それじゃあもう寝ましょうか。」
「そうです、ね。」


彼は小さく欠伸をすると、今度こそ目を閉じた。


久しぶりに彼の寝顔を見た気がする。
安らかに眠るその顔は真っ白で、まるで彫刻の様で、少し心配になってしまう。
微かな呼吸音が生きている事を私に伝えている。