だから私は、この苦い優しさから逃げて、忘れて、楽になりたいのに、
「やめて、ねぇ、君の為なら何でもするから、俺のこと好きでいて……?」
「……じゃあ、抱いてよ……。」
「……それは、ごめん、できない……。」
それをしたら、俺は彼女を裏切ることになってしまうから。
彼らしいな、と思った。
ねぇ、もし、もっと早く私達が出会っていたら、
私達が出会わなかったら、
こんな苦しい想いをしなくて良かったのにね。
彼の彼女は、2年前に亡くなった。
その1年後、私達は出会ってしまった。
ああ、辛いな。
彼女が生きていてくれたら良かったのに。
そしたらきっと、私達は出会わなくて、出会ったとしても何も始まらなかった。
