詩乃と私は、仲が良い。
きっと、それはお互いそう思っていると思う。けれど、これが大人というやつなのか、互いに恋人がいることは知っていても、その恋人がどんな人なのか、ということまでは知らない。
学生時代なら、写真なんかを「これ彼氏ぃ~」だとか言いながら見せたり(自慢)するのだろうけれど、私と詩乃の間で、そのやり取りは残念ながらなかった。
そうなるともちろん外見なんてものは知らないわけで、「多少は優美の恋人像を想像してはいたけど、イチミリも想像に掠りもしなかたから借金取りかと思ったよ」と彼女は言った。「恋人と別れたんじゃなくて借金取りから逃げてるのかとも一瞬思った」とも。
けらり、けらけら。
快活に笑う彼女が、私は好きだ。もちろん、友愛の意味で。信用もしている。
「でも声かけてよかったよ。怖かったけど、何か弱ってる感……? ほら、何か、捨てられて、でもそれを認めたくなくてずっとご主人様を待ってるワンちゃんみたいな……分かる?」
分かる。ワンちゃんのくだりは、分かる。
しかしそれを、件の男、一和理に当てはめ、想像することはできなかった。



