「血液検査の数値はまあまあですね。貧血も病的な物って言うより体質のようだから、無理せず気長に付き合ってください」
「はい」

平石家のホームドクターは都心から少し離れたところにある一軒家のクリニック。
少し前に代替わりしたばかりの30代の若い先生が診察してくれる。

「でも、何かおかしい時にはすぐに来てください」
「はい」

亡くなった母さんが同じような体質だったって聞いたから、きっと遺伝だろう。



「お世話になりました」
「お大事に」
受付で会計を済ませ遥とともに病院を出る。


「遥、ありがとう。私は一人で帰るから、仕事に戻って」
きっと無理をして時間を作ってくれたはずだろうから。

「ぅーん、せっかくだからちょっとお茶して帰ろうか?」

え、珍しい。

「時間、いいの?」
「ああ」