正直言って、遥はいい男だと思う。
彫りの深い顔をしているくせにバタ臭くなくて、あっさりとした二枚目。
身長だって180センチ越えで、程よく筋肉の付いたいい体。
その上頭の回転もよくてお金持ちで、パッと見欠点なんて見つからない。
しいて言うならば、俺様な性格と高いプライドが近寄りがたさを感じさせるくらい。
それも、一緒に暮らし本当の遥を知っている萌夏には何の短所にもならない。

「大丈夫か?」

朝一で遥のもとに朝食を運んだ萌夏が戻ってきたのを見て、雪丸さんが寄ってきた。

「ええ、大丈夫です」

確かに遥は弱っているけれど、ちゃんと乗り越えるはず。
このまま壊れていくような人じゃない。
誰よりも自分の立場を理解している遥だから、大丈夫。
そのためにも、

「主任、私にできることはありませんか?」
今は少しでも遥の力になりたい。

「人の心配をする前に、その顔をなんとかしろ」
「え?」

慌てて鏡を確認し、自分が泣きはらした顔をしていることに気づいた。

「すみません」
こんな顔で社内を歩いていたと思うと、恥ずかしい。

「いいさ、今は非常事態だ。気にするな」
「でも・・・」

朝っぱらから目を真っ赤にした萌夏を、雪丸さんがどんな風に理解したのか考えただけで恥ずかしい。

「なあ小川」
「はい」

「遥の周りで最近気になることはなかったか?」
「気になることですか?」
「ああ、どんな小さなことでもいいから思い出したら知らせてくれ」
「わかりました」

やはり、今回の騒動は遥を恨んでのことなのか。
でも、妬まれることはあっても恨まれるようなことはないと思うけれど。