「ごめん」
今度は遥が謝った。

いつの間にかソファーに座り込んだ萌夏と立ち尽くす遥。
どのくらいの時間がたったのかわからないくらい、2人とも茫然自失でいた。

「私こそ、ごめんなさい」
顔を赤くした萌夏。

側にいても気兼ねがなくて、何でも言いあえて、素の自分でいられる相手。
特別な存在だとは思っていたが・・・

「今の遥は少し弱っていて、気持ちが暴走しただけだから。ちゃんとわかっているからね」
気にしなくていいのよと、萌夏が笑って見せる。

「バカ、なんでお前が謝るんだよ。大体、いくら弱っていても嫌いな女に、き、キスなんてするかっ」
怒ったように言って、恥ずかしそうに下を向いた萌夏をギュッと抱きしめた。

誰かを独り占めしたいと思ったことはなかった。
どんなことをしてでも何かを手に入れたいと思ったこともなかったと思う。
物にも人にも執着しないように生きてきた。
でも、

「誰にもやらない」
小さな声でつぶやいた。

「大丈夫だよ」
そっと遥に手を回す萌夏。

本当に、こいつは煽るのがうますぎる。