「ちょ、ちょっと待って」
届いたケータリングの料理がテーブルに並んだのを見て、萌夏は慌てた。

「どうした?」
遥が取り皿を用意しながら、振り返る。

「これ、どういうこと?」
「何で?気に入らないの?萌夏は好き嫌いないはずだろう?」
「それはそうだけれど・・・」

確かに、好き嫌いはない。
出されたものは何でもいただく。小さいころから父さんやおばあちゃんにそう育てられたから。
でも、苦手なものはある。
クタクタになるまで煮込まれた葉物野菜。特に柔らかいほうれん草はできれば食べたくない。
後は、お肉のレバー。小さく切ってあったりペーストになっていれば平気だけれど、目の前のレバニラは大きなレバーがどんと入っている。

「貧血にいいメニューを選んだらそうなったんだ。さあ、食べなさい」
「えぇー」

これは絶対に意地悪だ。
隠し事をして心配をかけた萌夏に、そして嘘をついていることに遥は怒っているんだ。

好き嫌いはありませんと宣言している手前食べないわけにもいかず、苦手な物尽くしの夕食を2人で囲むことになった。