すぐに【わかった】と返信しようとしたが、ふと手が止まる。


『そもそもブランド物ばかり欲しがる女性って、普通に貴方のお金目当てではないのですか』


 今日、買い物へ行く前に助手席に座る彼女が言ったことを思い出す。

 あの時は香織のことを悪く言っているのだと思ったが、今思えば彼女は香織の名前を一度も出していない。

 俺は心の何処かで、会う度にブランド物の何かを欲しがる香織に対して、違和感を抱いていたのかもしれない。


 家で香織が彼女と対面した時も、正直あれは言い過ぎだと思った。

 だが香織は自分は悪いと思っていなかったようで、違和感は俺の中で蓄積されていく。


「……俺も寝るか」

 香織に返信するのはやめて、もう今から地下へ眠りに行くのは面倒だと言い訳し、今日は彼女と寝ることにした。

 特に深い意味はない。
 寝ている女に手を出そうとは思わないし、そもそも彼女に欲情などしない。


 次の日、彼女は目が覚めたら俺がいて叫びそうな気がする。
 むしろ俺を変態扱いしてきそうだ。

 その時は寂しいと口にしていたことを言ってやろうと思う。


 そうすればきっと彼女は図星だというような表情を浮かべながらも、必死で否定するのだろう。

 その姿を見たくなった俺は、翌日の朝に期待を寄せ、同じベッドで眠る彼女の無防備な姿を見ながら思わず笑みが溢れた。