といっても、彼がリビングに姿を見せるのはご飯の時だけである。その上、一緒に食べているわけでもない。

 二人で寝た日はいくつか言葉を交わしたけれど、その日以来、顔を合わせても今のように形式的な挨拶だけの場合が多い。


「なあ、今日何時に買い物に行く予定なんだ?」
「特に決めてないです」


 今日は休日で、郁也さんの仕事は休み。
 私もアルバイトがなかったため、一週間前に決めた通り、彼と買い物へ行くことになっていた。


「ならお前の準備が出来次第行くぞ」
「わかりました」


 郁也さんの言葉に返事をしながら、私は郁也さんの座っている席の前にピザトーストとインスタントのコーンポタージュを置いた。

 私も彼と向かい合う形で座り、一緒に朝食をとることにした。


「……どうしたんですか」

 ピザトーストを口に運ぼうとしたけれど、視線を感じて前を向けば、郁也さんが驚いたように目を見張って私を見つめていた。


「いや、お前が一緒に食べるなんて珍しいなと思って」
「そうですか?」

「初めてだろう」
「そういえば……そうですね」


 郁也さんがリビングに姿を見せるのが当たり前になってきて、つい感覚が鈍っていたようだ。