「あら、私たちが泊まったら不都合なことでもあるの?」
「そ、れは……ない、けど」
ここで本当のことを話せば、さらに面倒になるどころか、離婚は絶対に認めないと言われそうだ。
あくまで私たちは両親が納得する形での離婚にしたい。つまり今は、良好な関係であることをアピールしなければならない。
ここで拒否したら余計に面倒なことになると思い、仕方なく泊まることを受け入れた結果──
「どうして……」
「さっきから何ブツブツ呟いてんだ、耳障りだ」
2階にある寝室のダブルベッドの上で、私は体育座りをしていた。
信じたくないけれど、私の隣には──郁也さんがいる。
まさか一緒に寝る日が来るなんて思わなかった。
結婚式の日、ホテルのスイートルームに泊まった時ですら、ベッドは別々だったというのに。
この状況が受け入れられず、先程から呪文のようにブツブツ呟いていると、紺色のスウェット姿の郁也さんに怪訝そうな顔で見られてしまう。
「少し黙っていてください。この状況を受け入れるのに時間がかかるんです」
「まあ、確かに一緒に寝ることになるとは思わなかったな」
郁也さんは一度小さく息を吐いた後、体を倒して横になり始めた。
どうして平然としていられるのだ。私は郁也さんと一緒に寝るなど、嫌で仕方がないというのに。



