望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。



「悪い」
「あ、いえ……」

 気のせいだろうか。
 少し郁也さんの息が乱れているような気が……私には関係ないのだけれど。


「それよりリビングに何か用があるんですか?」

 てっきり地下へ直行すると思っていたけれど、リビングの扉を開けたということは、用があったのだろう。


「用は……」

 郁也さんは何かを言いかけたところで、何故か黙ってしまう。

 黙るというより、言葉に詰まらせている感じで続きを待っていると、彼は突然自分の後頭部を掻き始めた。


「……悪かったな」
「え……」

「さっき、香織がお前に突っかかってきただろ」


 まさか郁也さんが謝罪の言葉を口にするなんて、明日は雨でも降るのだろうか。

 彼は私から目を逸らし、どこか居心地が悪そうだ。
 その姿を見て思わず笑ってしまう。


「笑うな」
「ごめんなさい、おかしくって」


 とはいえ、いつまでも笑っているのは流石に失礼なため、すぐに笑うのをやめる。

 それに今は先程のことよりも大事な話があるのだ。


「それより郁也さん、明日私たちの母親が来ることを知っていますか?」

「……は?」


 私の言葉を聞いた郁也さんは“理解できない”というような表情を浮かべていたため、知らなかったのだと思った。