「そんな、畏まらないでくださいね!今日は俺たちがお邪魔させてもらってる側なんで……」
「お前ら、いつになく緊張してるんだな。ほら、とりあえず上がって」
同僚の一人が話している途中なのに、それを遮るように話し始めた郁也さん。
何でも自分が仕切らないと気が済まない性分なのだろうか。
「郁也さん、お帰りなさい。荷物、預かりますね」
「いや、大丈夫だ。それよりこいつらを案内してくれるか?」
いつになく優しい態度に調子が狂う。
一応私は怒っているのだけれど、彼の同僚もいるということで変な態度はとれない。
「わかりました。それではみなさん、荷物はこちらへ」
リビングの隅に荷物を置いてもらい、席へと案内した。
急いでお酒や用意していた料理をテーブルに並べていき、最後に炊き立てのお米と温めた野菜スープをそれぞれのお椀に盛り付けして出せば終了である。
「えっ、俺たちのためにこんなにもたくさん……ありがとうございます!」
「すごいっすね……何て完璧な奥さんなんだ」
みんな、テーブルに並べられた料理を見て感嘆の声をもらしていた。
突然家に来ると言われたにも関わらず、ここまで頑張ったのだ。そのような反応をされないと、報われた気がしない。
「もったいないお言葉です」
彼らの反応を見て嬉しそうに笑うふりをして、『ごゆっくりどうぞ』という言葉と共に私はキッチンへと向かう。



