締めくくりは白桃とマスカットが添えられたメロンシャーベット。口の中で儚く熔ける甘みと冷たい爽やかさを堪能し、空にした器を座卓の端にそっと()ける。少し背筋を張ってひと呼吸置くと、思い切った。

「聞いて欲しいことがあって」

倉科はすぐの思い付きで予約が取れる店とは違う。今日あたしと会うのを、お兄は最初(はな)から決めてたってこと。忙しいのにわざわざ時間を空けて、もちろん誕生日プレゼントのリクエストを訊く為なんかじゃなく。

心尽くしのお料理を台無しにしたくなかったのは二人とも一緒。終わりにお兄から切り出すつもりでいたか、あたしが告白するかどうかを見極めようとしてたのか。

とうに気持ちは固めてた。だから。正念場はここから。

「どうした?」

お兄がわずかに目を細めた。

「あたしね、好きになった人がいるの」

「・・・そうか」

表情を変えずに。

「どんな男だ」

真正面から貫いてくる眸。静かに深く揺らぎなく。誰だ・・・とは訊かなかった。

「お兄の代わりにあたしを大事にするって、昔の約束を憶えててくれた(ひと)

逸らすまいと膝の上でぐっと両の掌を握り込む。

「女なら誰にでも甘いのも知ってるけど。それだけじゃないって思うの、柳さんのこと」