素っ気なさすぎても勘ぐられそう。興味が薄れたフリで顔ごと逸らした。

志田なら憶えてるかもしれない、前にも会ったのか。ふと喉元まで出かかったのを押し込めて、薄墨ガラスの向こうをぼんやり眺める。

お兄の代わりになる約束。

自分が言い出したとも思えない。だって代わりなんて要らないじゃない、お兄がいれば。腑に落ちない消化不良。

確かめてスッキリ晴らしたい気持ちと、うかつに近寄ったらぬかるみに足を取られそうな躊躇いと。

吐息を逃した。どっかに追いやりたいのにこびりついてる。お兄の爪の垢でも煎じて飲ませたい男の声も、顔も。

・・・唇から消えない感触も。