スイレン ~水恋~

「・・・な」

んで。キス。

息を呑んで速乾セメントみたいに固まった。思考回路ごと。普通しないでしょ、好きでもなんでもないただのお客に。しかも長い付き合いの相手の妹に。戸惑いなのかすら分別できないモノが、あたしの中を隅まで埋め尽くしてる。

埋め尽くされながら意味を探して、目だけ柳さんとぶつかった。ふざけてたら間違いなく殴ってた。

「寂しそうだったからつい」

(なま)めかしい笑みが返った。

「それとも忘れちゃった?オレが淳人の代わりになってあげるって、あのときの約束」

アノトキノ・・・?大きく目を見張る。

いつの?
こないだが初対面よね?
約束って?
この(ひと)の勘違い?
・・・作り話?
からかわれてる?

お兄に『結婚する』って打ち明けられた日より、ある意味カオスに飲み込まれて。