「もう少し男を磨いてからお誘いします。今夜は会ってもらえただけで十分ですので、淳人さんにも宜しくお伝えください。・・・これで彼女の好きなものを」
爽やかな笑顔と、口も付けなかったスクリュードライバーの脇に一万円札を残して。紳士な彼は扉の向こうに静かにいなくなった。
なんだか出来すぎた男だった。あの容姿でまだ結婚してない理由を勘繰りたくなるくらいに。おじさまに差し向けられた人だからって、意地になって断ったつもりはないの。ただ息するみたいにお兄にピントを合わせて、足りないところを探してる。
・・・どうしたら外せるんだろう、お兄からほんのちょっとでも。このままじゃいつまで経ってもあたし。
不意に募った心許なさに、きゅっと唇を引き結ぶ。眸が歪みそうになったのを堪えてクラッチバッグからスマホを取り出し、志田を呼び出した。
『はい』
「用は済んだから迎えにきて」
『早かったですね』と、返った声がいきなり遠ざかった。
「大事なお嬢はオレが預かっとくから。ジャマすると蹴っ飛ばして殺すよー?」
耳元からあっけなく抜き取られてたスマホ。物騒な科白を吐いて通話を切った柳さんは、着てるベストの胸ポケットに勝手にそれを仕舞い込む。
爽やかな笑顔と、口も付けなかったスクリュードライバーの脇に一万円札を残して。紳士な彼は扉の向こうに静かにいなくなった。
なんだか出来すぎた男だった。あの容姿でまだ結婚してない理由を勘繰りたくなるくらいに。おじさまに差し向けられた人だからって、意地になって断ったつもりはないの。ただ息するみたいにお兄にピントを合わせて、足りないところを探してる。
・・・どうしたら外せるんだろう、お兄からほんのちょっとでも。このままじゃいつまで経ってもあたし。
不意に募った心許なさに、きゅっと唇を引き結ぶ。眸が歪みそうになったのを堪えてクラッチバッグからスマホを取り出し、志田を呼び出した。
『はい』
「用は済んだから迎えにきて」
『早かったですね』と、返った声がいきなり遠ざかった。
「大事なお嬢はオレが預かっとくから。ジャマすると蹴っ飛ばして殺すよー?」
耳元からあっけなく抜き取られてたスマホ。物騒な科白を吐いて通話を切った柳さんは、着てるベストの胸ポケットに勝手にそれを仕舞い込む。



