スイレン ~水恋~

「ねぇ、お願いしたらオレともデートしてくれる?」

「ハイ?」

お構いなしで交ざってきた、空気読まない強者が約一名。

「その彼ならよくてオレはダメ?」

「意味わかりません、どっちもお断りです!」

「だって?残念だったねぇ」

柳さんが鳴宮浩一に向かってしみじみ言ってる。・・・ん?え?あ。・・・・・・・・・。つい。

後の祭りの気まずさ全開で、ぎこちなく隣りに視線を戻してく。眉を下げた彼は切なげな笑みを滲ませた。

「諦めきれないと言ったら・・・男として見苦しいんでしょうね」

お兄うんぬんを差し引いても世間一般的には優良物件。極道の娘に白羽の矢を立てるぐらいだから、毒を皿まで喰らう覚悟も据わってるんだろう。だけど。

そそらない、これっぽっちも。揺さぶられるものが一つもないのアナタには。