スイレン ~水恋~

「よかったら今度、アフターヌーン・ティの美味しいカフェに付き合ってくれませんか。実はわりと甘い物好きで、コンビニスィーツにも目がないんです」

しっとりと笑みを浮かべ“次”を口にする。

ケーキとかマフィンが三段のスタンドに乗って出てくるアレよね。がっつりデートじゃなくてお茶に誘ってくるあたりも、脳ミソ軽いお坊っちゃんじゃないのは分かるんだけど。

一呼吸おいて真顔になった彼が、あたしの目を見ながら続けた。

「僕にもう少し時間をください梓さん。ナルミヤの利潤絡みなのは否定しませんが、写真を見て梓さんに一目惚れしたのは本当です。もっと僕という人間を知ってほしい。淳人さんに敵わないまでも、梓さんを想う気持ちは他の誰にも負けませんから」

お行儀のいい模範解答。これ断ったら鬼畜?・・・・・・はあ。

「シアワセが逃げちゃうよ?」

どっちも向日葵色の、カクテルグラスを静かにコースターに乗せた柳さんがクスリと笑って水を差す。放っといて。ジロリと睨めつければ涼しい顔。

心の中で盛大に漏らしたはずの溜息がなんで聞こえたの?!て言うか。関係ない男がなんでそんなに楽しそうなの?