「次はあずちゃんか。お兄ちゃん子は卒業できそうかい?」

シャンパングラスを置くと今度は矛先があたしに。

()い人を決めて、そろそろ淳人君を安心させてやらないと」

「もうちょっとお兄を心配させたら考えてみます。あんまり焦ってもなくて」

話が向く予想はしてたから、準備した答えをわざと困り顔で。お兄もやんわり助け船を出してくれた。

「急かすつもりはありませんが、梓と一緒になる男を見極めてやるのも自分の役目です」

「ああ、それならちょうど良かったかなぁ。淳人君の眼鏡に適うかどうか、実はあずちゃんに是非会いたいって人がいるんだよ。仕事の都合で近くまで来るらしくてね、二人とも食事が終わってから挨拶だけでもどうだろう?」

「・・・!!!」

やられたぁっ!脳内で地団駄を踏む。お兄のお祝いにかこつけて仕組まれたーっっ。

まさかと思ってお父さんにぶん投げた視線が、かち合った途端あっさり泳ぐ。憶えてなさいよタヌキオヤジ~~!!

ニコニコと温厚そうに笑み零す策士に追い込まれながら、魚はすでに網の中。