あたしから心が離れたわけじゃない。伝わってくる。何年経った今でも大事に想ってくれてる。だけど傍にいてくれない。

鬼ヶ島の鬼になったから?いつか桃太郎に退治されるかも知れないから?・・・あたしと子供達を巻き添えにしたくないから?

はぐらかしていつも本当のことは教えてくれない。それもいつだってあたしの為なの。

両手を伸ばして隆二の首に巻き付け自分からキスした。腰に回された腕に引き寄せられ深く深く繋がる。どこが変わっても、啄み方もなぞり方も食べ方も隆二のだった。なにも変わってなんかない。

頭の芯が溶けてく。奥の奥が疼く。切なさに()かれる、こんなにも。どうしようもないほど・・・っ。

確かめ合うようにひたすらお互いを貪って、隆二があたしの鼻の頭に口付ける。おしまいの合図だと分かって、行き場のない熱を堪えながら胸元に顔を埋めた。

「・・・あたしの人生はぜんぶ隆二にあげたの。この先も隆二のことだけ考えるし、死ぬまで隆二しかいらないわ」

隆二のジャンパーを強く握りしめ、ありったけの気持ちを吐き出す。

「生きててくれてよかった。生きててくれるならいいの、引き留めない。でも待ってるから・・・っっ。あの家で、一人になってもずっと待ってるからっ。隆二の家なんだからいつでも帰ってきて・・・!」

隆二はすぐに答えなかった。ただあたしをきつく抱き締めた。
アリガトウに聞こえた。ゴメンネに聞こえた。

「・・・・・・帰るよ。いつかオマエのところに」