「あたしには隆二だけよ、これからだってっっ。ろくでなしのフリしてる狡い男でも嫌いになんかならないのよ!隆二があたしをそういう女にしたクセに、勝手に放り出さないで・・・!」

涙声で必死にすがった。父親が必要だから引き留めたんじゃない、あたしが隆二を失いたくないだけ。ただそれだけ。

「・・・言わなかった?オレはオマエのだよずっと。傍にいなくても、いつかオレの代わりを見つけても」

「代わり、なんて、っ・・・」

何度も首を横に振った。

「隆二じゃなきゃ、・・・しあわせに、なれ、な」

たぶん。きっと。どれだけ泣いても怒っても隆二はあたしを置いてく。笑ってサヨナラを言う。最後だから子供達に逢いにきた。最後だからあたしを追いかけさせた、こうなるよう仕向けて。

分かってる。分かってたけど・・・!!

七年分、仕舞い込んで詰め込んだ想いの堰が、ぷつんと切れた。溢れてあたしを押し流す。

子供みたいに声を上げて泣いた。隆二、隆二、隆二。名前を呼んだ。見えないガラスを叩き続けた、壊れたら届く気がした。

「それだけ泣かれたら思い残すことないなぁ」

割れないガラス。その向こうで隆二が笑った。
とびきり甘い懐かしいあの顔で。