責めたかったんじゃないのに。『生きててくれてありがとう』が一番最初だったのに。

ただ口惜しかった、悲しかった。隆二が、両手に抱えてる“荷物”をあたしに預けてくれないこと。負い目にしか思ってないこと。あたしなら大丈夫って信じてくれないこと・・・!

柳隆二を殺して別人になった理由も訊かない。隠し事は許すって言ったじゃない。今まで黙ってたのも、世界の果てまで水に流すから。

だから。
隆二、おねがい。
どこにも行かないで!
置いてかないで・・・!

「・・・・・・ごめんね」

頭を撫でる掌。こうされるのが好きだった。安心した。魔法の手だった。・・・どうしてか温もりが小さくなった気がした。優しいのは変わらないのに、骨ばって軽くなった気がした。

「赤ずきんちゃんを泣かせたくなくてつい・・・ね、待っててって。嘘ついたバチが当たって死に損なったのかなぁ。・・・今は日本(こっち)と向こうを行ったり来たりで、自分が日本人なのもたまに忘れるよ。ひどい男だねぇ」

歌うように。切なそうに。

「こんな、嘘つきで薄情なロクデナシにいつまでも惚れてるなよ、もったいない」