桶の底がすっぽり抜けたみたいに。頭の中が空洞になった。死んだはずの恋人が生きてたなんて結末は、映画か漫画だけだと思ってた。
どれをどの順番で飲み込んで、この大きな風穴を塞げばいいのか。もう何がなんだか。
「・・・・・・生きて、・・・たの・・・?」
茫然と呟いた。胸元に顔を埋めたまま。今にも膝から崩れ落ちそうに。
「・・・死んだよ。オマエの知ってる柳隆二は」
優しく響いた。線の細い声。前はもっと深く広がる声だった。
「今オマエを抱き締めてる男は幽霊。顔も声も全然ちがうだろ?名前も借り物でねぇ、柳隆二はどこにもいない。・・・ごめんね」
見えてないのに淡い笑い顔がそこにあった。
柳隆二は死んだ。そう告げた伊沢さんの言葉を嘘だとは思わなかった。だけどパパは空にいるって言いながら、いつか帰ってくるのを信じたかった。きっと諦めながら待ってた。あたしの人生が終わる最期まで。
生きてた。
柳隆二じゃなくなっても生きてた。
腕も脚もあって、喋れて、笑えて、
あたしを忘れないで生きてた。
「・・・柳隆二じゃない隆二はいらないって・・・、あたしが言うとでも思った・・・?」
どれをどの順番で飲み込んで、この大きな風穴を塞げばいいのか。もう何がなんだか。
「・・・・・・生きて、・・・たの・・・?」
茫然と呟いた。胸元に顔を埋めたまま。今にも膝から崩れ落ちそうに。
「・・・死んだよ。オマエの知ってる柳隆二は」
優しく響いた。線の細い声。前はもっと深く広がる声だった。
「今オマエを抱き締めてる男は幽霊。顔も声も全然ちがうだろ?名前も借り物でねぇ、柳隆二はどこにもいない。・・・ごめんね」
見えてないのに淡い笑い顔がそこにあった。
柳隆二は死んだ。そう告げた伊沢さんの言葉を嘘だとは思わなかった。だけどパパは空にいるって言いながら、いつか帰ってくるのを信じたかった。きっと諦めながら待ってた。あたしの人生が終わる最期まで。
生きてた。
柳隆二じゃなくなっても生きてた。
腕も脚もあって、喋れて、笑えて、
あたしを忘れないで生きてた。
「・・・柳隆二じゃない隆二はいらないって・・・、あたしが言うとでも思った・・・?」



