駅か、店をはしごか。右に左に見回し、駅とは反対方向に歩くそれらしい後ろ姿を捉えた。人通りはまばらで、すぐ追いつけそうだった。スニーカーの大活躍は普段だってそんなにない。
どんどん距離が縮まり、呼び止めようとした時。不意にその人が角を曲がった。見失うかと慌ててあたしも。次の瞬間、腕を強く引かれ、なにかに衝突して身動きが取れなくなってた。
「・・・やっぱり追ってきちゃったかぁ」
真上で聞こえた。きつく閉じ込められた拘束から身を捩り、力いっぱい抵抗しようとして一瞬、呼吸を忘れる。
「オマエに合わす顔がないのにオレも甘いねぇ」
知らない声。さっき鳴子で見た知らない男。なのに知ってる。話し方、柔らかさ、語尾の伸ばし方、クセ、ジャンパーに染みた煙草の匂い・・・!
「もうオレを忘れていいよ?赤ずきんちゃん」
その呼び方も。
イントネーションも。
あたしが愛した男のだった。
「だからね、返したんだよ。・・・あのキーケース」
どんどん距離が縮まり、呼び止めようとした時。不意にその人が角を曲がった。見失うかと慌ててあたしも。次の瞬間、腕を強く引かれ、なにかに衝突して身動きが取れなくなってた。
「・・・やっぱり追ってきちゃったかぁ」
真上で聞こえた。きつく閉じ込められた拘束から身を捩り、力いっぱい抵抗しようとして一瞬、呼吸を忘れる。
「オマエに合わす顔がないのにオレも甘いねぇ」
知らない声。さっき鳴子で見た知らない男。なのに知ってる。話し方、柔らかさ、語尾の伸ばし方、クセ、ジャンパーに染みた煙草の匂い・・・!
「もうオレを忘れていいよ?赤ずきんちゃん」
その呼び方も。
イントネーションも。
あたしが愛した男のだった。
「だからね、返したんだよ。・・・あのキーケース」



