「あの、・・・すみません、いきなり」
内心で自分の迂闊さに呆れながら、作り笑いを貼り付けた。頭から抜け落ちてた、他のお客がいるかもしれないって当たり前が。今さら『出直します』とも言い辛い。
「一人で寄ってくれるなんざ珍しい」
「子供達は任せてきたんです。・・・えぇと車で来ちゃったからノンアルでいいですか?」
「折角だ、ゆっくりしてっちゃどうです」
年々渋さの増してく大将が薄く口角を上げ、奥に引っ込もうとした刹那。
「・・・また来るよ」
作業帽を被り直した先客が席を立つ。
「せっかちな野郎だな、ゆっくりしてけ」
常連さんにしては遠慮のない物言い。伊沢さんを慕って来てる昔馴染みかもしれない。勝手な想像を巡らせた。
無口なお客さんが静かに出てった気配を背中で聞き、空いたテーブルの上を何気なく見やった。箸置きや飲みかけのグラス、飲み代以外にも目に映った。・・・忘れ物?
「追いかけてみますね、まだ近くにいるかもしれないからっ」
咄嗟に置き忘れのライターに手を伸ばすと、伊沢さんが何か言ったのも構わないで表に飛び出す。
内心で自分の迂闊さに呆れながら、作り笑いを貼り付けた。頭から抜け落ちてた、他のお客がいるかもしれないって当たり前が。今さら『出直します』とも言い辛い。
「一人で寄ってくれるなんざ珍しい」
「子供達は任せてきたんです。・・・えぇと車で来ちゃったからノンアルでいいですか?」
「折角だ、ゆっくりしてっちゃどうです」
年々渋さの増してく大将が薄く口角を上げ、奥に引っ込もうとした刹那。
「・・・また来るよ」
作業帽を被り直した先客が席を立つ。
「せっかちな野郎だな、ゆっくりしてけ」
常連さんにしては遠慮のない物言い。伊沢さんを慕って来てる昔馴染みかもしれない。勝手な想像を巡らせた。
無口なお客さんが静かに出てった気配を背中で聞き、空いたテーブルの上を何気なく見やった。箸置きや飲みかけのグラス、飲み代以外にも目に映った。・・・忘れ物?
「追いかけてみますね、まだ近くにいるかもしれないからっ」
咄嗟に置き忘れのライターに手を伸ばすと、伊沢さんが何か言ったのも構わないで表に飛び出す。



