スイレン ~水恋~

『どうして』が押し寄せる。頭の中が激しい濁流に飲み込まれる。偽物?本物?だとしたって隆二本人か、あたしがプレゼントしたのを知ってた人間しか・・・!

我に返ったとき、帽子の男は目の前から消えてた。影も形も見当たらない。ただ混乱した。

矢も盾もたまらない衝動に駆られる自分にブレーキをかけたのは、子供達の無邪気だった。

「スーパーこっち!ありさ、さきにいっちゃうよ~」

「ねーママ、あのおじさんにもらったの、みせてー」

「・・・うん、これはね・・・?」


『ダイジョウブ』と呪文を唱えながら、無理やり口角を引っ張り上げた。

ねぇお願いだから教えて。
ねぇ。なんとか言って隆二・・・!

声にならない声を殺した。

この指が握りしめてるのはジョーカー?
それとも?

サマーニットの首許をすり抜ける爽やかな風。注がれる穏やかな午後の陽差し。体はちゃんと春を感じるのに、心だけ違うどこかに取り残されてるような。

天を仰いだ。半ベソかいたのを知られるのは、ママの意地とプライドが許さなくて。