『でー?シダさん、一緒にサッカーやったわけ?』

キッチンカウンターに置いたスマホのスピーカーから、面白がった秋生ちゃんの声が飛び出す。

「サッカーじゃなくてフットサル?お父さんがチームに入ってて、無料体験的な話だったみたい。ショウ君ママからも誘われちゃったから、見に行くだけ行ったのよ。ダルマが逆立ちしても、志田とは一生縁がないスポーツ!」

『じゃあ今度、陽人貸そっかー?庭でたまぁに、太介(タイスケ)とサッカーの真似事してるよー?』

「うん、その時はお願い。タイちゃん元気だよねぇ、そのうちユウが負かされそう?」

『誰に似たんだか負けず嫌いだからねー。・・・あっ、ゴメン梓、七央(ナナオ)が起きた!また電話するー』

「ハルトさんに宜しくねぇ!」

人参の皮を剥く手を止め、スマホ画面を閉じた。

今は秋生ちゃん達にも子供が二人。四歳になるお兄ちゃんと一歳半の弟君。事情があって、タイちゃんはハルトさんの臼井(うすい)性、ナナちゃんは秋生ちゃんの藤代姓。別々の籍で家族四人、一緒に暮らしてる。

彼女曰く、タイちゃんの妊娠はハルトさんの陰謀で。お互いに全部ぶちまけ合い、潔く腹を括ったとかナントカ。月一の女子会はさすがにもう無理だけど、遊びには必ず誘ってくれるのも変わらない。

育児はちょっとだけこっちが先輩でも、あたしの人生ごと支えてくれる大先輩には、返しきれない恩ばっかり増えてく。