子供達を“忘れ形見”って呼ぶのは伊沢さんの口癖。すぐに妊娠が分かり、お兄には実家に戻ってこいと説得された。だけどあたしの決心は変わらなかった。隆二がくれた、宝箱のこの家で双子を育てるのを。

そしたら漏れなく世話係がついてきた。とくに子育ての経験値(スキル)は、背に腹は代えられない。・・・ことにした。あくまでベビーシッター、間違ってもパパの代わりじゃないの。

「でねー、しょうくんがねー、こんど、しょうくんのパパとー、ゆうじのパパとーみんなでサッカーしようって~」

「え~っ、ありさはゆうえんちがいい~っ」

ドーナツを頬張った優二が目を輝かせて。隆二を可愛いくまとめた風な顔立ちは、将来がとっても不安というか、楽しみというか。

ちなみに有紗は誰が見ても一目であたし似。性格はどっちかって言えば、ユウの方が我慢が利いてお兄ちゃんぽい。先に出てきたのは娘なんだけど。

「サッカーはいいけど、ユウ?パパはお空で、ボールは蹴れないわよ?」

「しだがいるから、できるよぁ」

ムリッ!!

極道も体育会系なのは認める。でもねぇ体力作りしてても、健全な汗は流したことない職業なの。分かるでしょ?黒スーツしか着てないでしょ?それとね?

「志田はパパじゃないって、いっつも言ってるでしょおぉぉぉ?」

ニッコリ笑いながら口許が引き攣る。