『ママー、ただいまぁっ』

「お帰りなさい!ユウ、アリサ。ランドセル置いたら、手洗いうがいでしょ?」

『はぁい!』

返事は素直な双子。リビングに顔だけのぞかせると、ホールをバタバタ駆けてく足音。

「・・・お嬢、戻りました」

「ありがと志田」

今年で三十三になるあたしを、この男は一生『お嬢』呼びする気らしい。

小学校に上がったばっかりの新一年生は何からなにまで楽しいらしく、志田の送り迎えで帰ってくると、おやつを食べながら学校であったことを、まだたどたどしい口調で一生懸命に話してくれる。

別々のクラスだから、先生も、出てくる友達の名前も違うし、体は一つでいいから頭が二つ欲しい。正直、志田がこの家に居座ってるのは助かってた。一人分足りない手足の代わりは真面目に。

思ってもなかったわよ? 初心者にいっぺんに二人もなんて、神様も隆二も気前がよすぎ。