隆二を見送るとき、悪いことは何も考えなかった。ハチミツ味のキスと、ハチミツ色の囁きと笑い顔を、これでもかって置いてくから。

待ってるあいだは志田がいて、長電話に付き合ってくれる秋生ちゃんがいて。そのうちひょっこり帰ってくるの、『ただいま』って。

だから待てた。疑わなかった。あたしに引き止めさせなかった、いつだってランプの精の魔法で。

再生を繰り返す。
殻だけになった頭の中で、
壊れたプレイヤーが。

“大事な女を置いてくからねぇ”
“おしまい”
“オレがいなくても”
“赤ずきんちゃん”



・・・ねぇ隆二。

乗り込む泥船が沈むの分かってたくせに。

あたしを騙して待たせるなんて。

ひどい男。

約束破ったこと、なかったくせに。




「・・・・・・・・・うそつき・・・」