クッションカバーに吸い込まれてく、閉じた(まなじり)から染み出した雫。

欲シイノ。

“誰か”

(ムナ)シイノ。

“あたしの中を埋めて”

心細イノ。

“お兄の代わりになって・・・っっ”

躰の奥底で吠えてる。初めて味わう(かつ)え。欲望。切願。・・・この時はまだ自分がなにを求めてるのかさえ。

「・・・梓お嬢」

今度はリアルな温もりがあたしの後ろ頭に乗った。

「気に入りのクッションが鼻水(まみ)れになります」

・・・・・・・・・うぅー。

「鼻かんでもらえませんかね」

慰めの欠片もない科白に思わず。抗議しようと鼻をすすり上げながら、おどろおどろしく顔を上げる。