聞き入りながら。胸の隅で、やっぱり年越しは間に合わなかった男に苦笑い。

「菓子の代わりみてぇなもんでしたが、今もたまにせがまれましてね。・・・酢飯に高菜と煎りゴマだけで、手間かけちゃいねぇのに美味いって笑いやがるんで」

「隆二には伊沢さんの味がふるさとの味なんです、きっと」

素直に思った。自分に優しかった人の味は心に染みて、一番のごちそうになるんだろう・・・って。

「・・・・・・俺を泣かせるなんざ、大したお嬢さんだ・・・」

「泣かせるなんてとんでもな」

飾って言ったつもりもなかった。流し目で不敵に笑い返されると思ってた。

うつむき加減で目頭を押さえた仕草は、珍しくお芝居なのかと思った。戸惑った。いつも毅然と張ってる彼の肩が小さく揺れた。そう見えた。

「伊沢さん・・・?」

「いや、・・・見苦しくて済まねぇなお嬢さん。・・・伊沢も焼きが回りました」