小鍋でお味噌汁を二人分、おかずは有り合わせ。隆二は夜の男だから夕飯は一人きりが多かった。作り過ぎを冷凍保存してるのが、こういう時にも重宝する。

後片付けは志田に任せ、お風呂を済ませる。緩いウエーブをかけた前下がりボブの髪を乾かし戻ると、ソファにお尻を沈めたあたしの前にホットレモネードが置かれた。

「明日は出かける予定があれば車を出します」

「志田だってほかに色々あるでしょ?あたしにかまけてなくて、いいわよ」

「お嬢が気にすることじゃありませんが」

相変わらず、にべもない。世話係が減ったらもっと身軽になれるのに、この男もたいがい一徹だから。

極道に労働基準法は関係ない、とは言えあたしより一回り上でアラフォー。浮いた話ひとつ聞かないのもどうかと思うの。

「余計なお世話だろうけど、もうちょっと自分のことも考えなさいよ。仕事ばっかりしてたら彼女に逃げられるわよ?」

「・・・本当に余計な世話ですね」

脇に控えて見下ろす顔のうんざり具合ったら。思いきり『鬱陶しい』って隠しもしないのを、構わず食い下がった。

「結婚も世話係やめるのも、志田の自由なんだから。あたしに遠慮なんかしてないわよね?」