矛先が向けられた隆二は眉を下げて弱り顔。目の奥が笑ってた。

「淳人がよそ見してるからって、梓に後ろ指さされるマネはしないよ?」

「だんだん秋生が小姑に見えるな」

「アラ、ごめんあそばせー」

しなを作っておどけた彼女にハルトさんが肩を竦め、あたしへ片目を瞑ってみせる。

分かってる。秋生ちゃんは優しく心配してくれてるだけ。結婚とは別のカタチで一緒にいるあたし達の、意思を尊重してあれこれ言わないし訊かない。悩みごとは隠しても必ず気付いて、真剣にお節介を焼いてくれるのが秋生ちゃんだ。

あたしのことばっかりで、逆にハルトさんといつ結婚するのか、ずっと気にはなってる。大好きな二人の、もっと溢れそうな笑顔を見せてほしいって。二人にしか解決できない何かを抱えてるんだとしても、今度はあたしにお節介を焼かせてって。心から願ってる、いつだって。

「ほら焼けた」

高級和牛の赤身を刺した串を、あたしのお皿に取り分ける男の笑い顔が。澄んだ空の下で無性に愛おしく見えた。文句なしに幸せだった。