「明日、出かけよっか」

真夜中の2時過ぎ。遅く戻って後からベッドに潜り込んできた隆二が、半分寝ぼけてるあたしを胸元に引き寄せ、髪にキスを落とす。

仕事がない時はどっちかと言えばインドアで、秋生ちゃん達に誘われれば海でも山でも。このまえ四人で行った、テントサイトのグランピングも素で楽しそうだったし、普段は億劫がってるわけじゃないのも知ってる。

「・・・うん、いく・・・」

買い物でも思いついたのかと生返事。耳から甘噛みし始めた隆二に、いつもより軽めに躰中を食べられて眠りにつく。

会社の始業時間くらいに目が醒め、朝食の準備ができた頃合いを見計らって隆二を起こした。

食器洗いやら簡単な家事を済ませてリビングに戻ると、今日の行き先をはぐらかしたままの男はとうに支度し終わり、ソファで悠々と脚を組んでる。

黒の三つ揃いにグレーのシャツ、山吹色のネクタイを締め、髪をうしろに流した“正装”。お兄とは種類が違う男前でいつも見惚れる。心臓が躍る。・・・溺れてるのは自分ばっかりな気がして口惜しい。わざと冷静を装う。

「仕事なの?」

「夜はね」

「あたしも着替えるけど、ねぇ、スカートとパンツだったらどっち?」

「好きなのでいいよ?」

「それが一番困るんだってば!」

「どれ着てもオマエはいつも可愛い」

甘い声で艶めかしく笑む男。あたしを黙らせる天才魔術師。