「甘やかさないで」

アイシテルって言われるよりずっと切なく染みた。涙腺が緩みかけたのを隠して、隆二の胸に頬を擦り寄せる。

意地と強がりと、生まれて初めての本気。持ってる武器はそれだけ。足りないものは山ほどあるんだから。

「梓がもらってくれただけでオレはねぇ」

歌うように。顔が見たかったのに、腕に閉じ込められたまま。

「それでオマエを泣かせたって、いつかアリスちゃんと淳人に殺されたら悪くない」

まるで、誰かに殺されるのが普通に聞こえた。わざと呆れて取り合わないフリをした。

「悪いでしょ、秋生ちゃんなんかゼッタイ楽に死なせてくれないわよ?」

「かなぁ」

「そう!」

頭の上で楽しげに隆二が笑った。