スイレン ~水恋~

ウェーブパーマで緩くうねる鎖骨下までの髪をざっくり乾かすと肌のお手入れを済ませ、湯上がりのラフな格好でリビングに。

程よい疲労感に包まれて二人がけソファにお尻を沈めれば、カフェテーブルにグレープフルーツジュースのグラスが置かれた。

「ありがと」

白シャツの袖をまくった黒ネクタイの志田は目礼で返す。

世話係はとっくに卒業したはずなのに、未だにこうしてお節介を焼いてくれてる。と言うか焼かせてると言うか。物心ついた時には(そば)にいたし、よくよく考えたらお兄よりも密着時間の度合いが長いんじゃないかと思う。

志田だってもう結婚しててもおかしくないのよね。イケメンの部類じゃないにしても中の上?目も細くて表情筋が乏しいから、なんかこう映えないって言うの?でも全体的なバランスは取れてる顔だと思うのよ。全くモテなくはない。・・・多分。

口の中にさっぱり広がる酸味と苦味を半分まで飲み干しながら。脇に立ってる志田を盗み見したら横目と合った。