幻だって離さない、握ってた上着を放り隆二の胸元にしがみ付く。温かい生身の手触り、脈動、生きてる・・・!!

色んなものが一気に込み上げてきて破裂しそうなほど。だけどどれ一つ言葉になって出てこない。嗚咽を殺し、ただ躰を震わせてた。

帰ってきたら強がってでも、にっこり余裕で『おかえりなさい』。『待ちくたびれた』って拗ねて文句は言うけど泣かない。絶対厳守。心に誓ったのに。

「・・・フラれたと思ってマジメに仕事してたら、帰るの遅くなっちゃってさ」

優しい響き。跳ねるシャワーのお湯が、髪を、着たままの服を濡らす。伝う雫に涙が紛れる。

「伊沢さんや淳人達が知ってるとおりの男だけどね。オレでよかったら」

顔も上げられないあたしの頭の上に、大きな掌がやんわり乗った。

「オマエがもらってよ」