スイレン ~水恋~

しんみりしつつエレベーターを降り、二つ並んだ手前の玄関ドアのハンドルにカードキーをかざして中に入る。

「ただいまぁ・・・」

「お疲れ様ですお嬢」

リビングから迎えに出てきたのは志田。

三和土(たたき)に揃えてあった革靴で、いるのは分かってたわよ。帰ってきて灯りが点いてるのも安心する。安心するけど!これでも成人女子なんだから、留守中に勝手に物色しないでよバカぁ~!

「来るなら来るって言いなさいよー。デリカシーがないのよ志田はぁ」

「オムツまで替えてやった女に言われても、痛くも痒くもありませんが」

「頼んだ覚えなーいっ」

「そうですか」

ほろ酔い加減の手からバッグを取り上げ、本体(あたし)を洗面室に押し込む。

「風呂は沸いてます」

見ればランドリー籠が空っぽ、洗濯物も片付けてある。・・・オムツ替えた女の下着なんてどうでもいいんでしょーけど?!