十分かからずにマンションに着き、玄関先までついて来てくれた秋生ちゃんは、隆二がまだ帰ってないのを見届けてあたしの顔を覗きこんだ。

「陽人もさ、誰だっていつどーなるかなんて分かんないんだからね。ムダな心配するより胃袋つかむ練習でもして、きっちり女を磨いてなさいよー?」

「ふぁふぁっふぇふ(わかってる)」

両頬をつままれながら。

「明日、新しいスマホ買いに行くんだっけ?付き合おっか?」

「ふぁいふぉうふ~(大丈夫~)」

「よしよし。帰って来なかったら、ヤナギさんはあたしが必ず見つけ出してぶっ飛ばす」

“必ず見つけ出して”辺りからワントーン低く聞こえた。

最後はきゅっとハグしてくれた彼女の笑みを扉の向こうに見送る。日付も変わって、とうとう隆二は誕生日に間に合わなかった。