鳴子で出迎えてくれた秋生ちゃんの笑い顔は、女子会の時と変わらない普段どおりだった。
両手に花、カウンターの向こうで小気味いい音を響かせる伊沢さん。志田の顔ばっかり見てた数日間が洗い流されてくみたいな、久しぶりに感じた気安い時間。頭の片隅には隆二とお兄が焦げついたまま、それでも楽しかった。
先に寄ってもらったマンションの部屋に、隆二が戻った跡はどこにもなくて。キッチンも洗面所も一緒に出かけたあの日のまま、生温く蒸した空気が澱んでた。
エアコンのスイッチを入れ、灯りという灯りを全部点けて、書き置きを残した。『おかえりなさい』の一言だけ。見つけてくれたら、あたしを探すわよね?ワガママと意地悪が半分半分。
背中を耳にしながら待ってたけど、お開きになるまで店の引き戸が擦れた音を立てることはなかった。恋愛漫画なら間違いなく、息切らせて恋人が駆け込んでくるのに。
帰りしな、いつでも連絡していい、と伊沢さんが携帯番号のメモ書きを手渡してくれたのを。お守り代わりに財布に大事に仕舞いこんで、ハルトさんの車で送ってもらう。
両手に花、カウンターの向こうで小気味いい音を響かせる伊沢さん。志田の顔ばっかり見てた数日間が洗い流されてくみたいな、久しぶりに感じた気安い時間。頭の片隅には隆二とお兄が焦げついたまま、それでも楽しかった。
先に寄ってもらったマンションの部屋に、隆二が戻った跡はどこにもなくて。キッチンも洗面所も一緒に出かけたあの日のまま、生温く蒸した空気が澱んでた。
エアコンのスイッチを入れ、灯りという灯りを全部点けて、書き置きを残した。『おかえりなさい』の一言だけ。見つけてくれたら、あたしを探すわよね?ワガママと意地悪が半分半分。
背中を耳にしながら待ってたけど、お開きになるまで店の引き戸が擦れた音を立てることはなかった。恋愛漫画なら間違いなく、息切らせて恋人が駆け込んでくるのに。
帰りしな、いつでも連絡していい、と伊沢さんが携帯番号のメモ書きを手渡してくれたのを。お守り代わりに財布に大事に仕舞いこんで、ハルトさんの車で送ってもらう。



