「隆二はお嬢さんに鍵を預けてるんで?」

小さく頷いた。

「道理で俺のところに置いてかねぇ訳だ」

「それって・・・」

「特別なんでしょうよ、お嬢さんが」

微動だにしない後ろ頭。仄かに和らいだ声音。

「・・・他にいやしません、隆二が手前ェの持ちもンを残した女は」

知らず胸元を握りしめてた。服の下に大事にぶら下げた輪っかの感触を確かめるように、強く。

鍵は遺言で、指輪は約束。どっちかにしてよ隆二の馬鹿。顔を俯かせる。

心臓が千切れそうで、苦しいのに嬉しい。

泣きたいのに幸せ。

こんなにどうしようもなく。

・・・幸せだと思った。